航空自衛隊医官よもやま話(1) | IMCニュース

航空自衛隊医官よもやま話(1)

 小生大学を卒業し、医師としての出発点は自衛隊の医官でした。恥ずかしながら学生結婚をして一児の父になっておりました小生はまず卒業したら固定した収入が必要と考え職場として自衛隊を選択したのでした。一般に大学の医局に入局すると助手になるまでは無給で収入はアルバイトで稼がなければならず、健康保険も自分で用意しなければなりません。その点自衛隊の医官は入隊すればその階級の俸給が貰え、更に初任給調整手当という医官手当が貰えます。また小生の父は元海軍軍医で小生が大学に入った時から『お前は自衛隊に行け、それも海上自衛隊だ』と考えていたようで、学生結婚させて頂いたこともあり、親孝行も兼ね自衛隊に行くことにしました。偶々父の先輩のM先生、大船で開業なさっている先生ですが、その御子息が航空自衛隊の医官として勤務されており、その関係で小生の6年生の秋に出願資料一式を父が嬉々としてM先生から仕入れてきました。小生としては、父の希望の海上自衛隊は、海の仕事、船に乗らねばならず、映画や本の中での軍医は艦長や傷病兵と一緒に艦と運命を伴にしなければならいと聞いており(U.S.Navyは違うようですが)、海で苦しむのは嫌だ。とまた陸上自衛隊は、今でこそ米軍のように制服(軍服のことですがわが国では何事にも“軍”という言葉はご法度で)は洗練され格好よくなりましたが当時は所謂カーキ色の野暮ったい制服で嫌だ。とそれなら旧軍にはない新しい航空自衛隊がいいと判断し決めました。11月になり自衛隊医科歯科幹部候補生の入隊試験が航空自衛隊入間基地であり小生は試験に臨みました。『医者でも入隊の試験があるんだ。でもなんか変だな』と思いつつ、入間基地へ行きました。試験会場は学校の教室のような部屋で入るとそこには3~40人の受験生がいました。『おっと、こんなに医官として希望する人がいるんだ』形式的なものと聞いてきた小生は『これはやばいかも?』少々緊張してきました。(実際医官の希望者は小生一人だけでした)試験は一般教養と英、数、国と面接だったような記憶です。試験問題はどうだったかは全く記憶にありませんが、面接は、多分2佐の人が二人ぐらい居て医官の希望者が珍しいようで興味津々に、どうして自衛隊に入りたいのかなど当たり前のことを質問されました。その次が身体検査です。ここで小生は娑婆と違う軍隊を経験しました。身体検査を担当した医官は(後で知りましたが当時入間基地衛生隊長M2佐殿で後にその先生と知り合ってからさもありなんと思うほど旧軍の息吹を残した軍医殿でした)なんと肛門検査なるものを小生に施したのでした。それは医者に背を向けズボンを下ろし、前屈みになりお尻を突き出すのです。(小生入隊して各種の身体検査を自分でもやりましたが、規則ではする事になっていたのですが体験からこの屈辱的な格好をさせるのが不憫で採用しませんでした)『とんでもない所だ軍隊は』でした。こうして試験も無事に終わり、翌年2月か3月頃に採用通知が来ました。4月14日に自衛隊中央病院に出頭し入隊するようにとの指示でした。その頃の医師国家試験は4月の初めにあり、試験が終わったらのんびりしよう(大学などの入局は試験の発表後)、と目論んでいましたが合点そうは行かずすぐ入隊です。4月14日小生は自衛隊中央院へ、そこでまず制服の貸与を受け、初めてであることも鑑みられずに自衛隊の仕来りの第一である(どこの軍隊でも、勿論旧帝国海軍、陸軍でも)宣誓と申告の儀式が執り行われます。多分20分位の練習で本番です。同じ日に入隊する医官は確か一名でした。まず院長室で国旗の前で宣誓を行い、次に小生は、そしてこれから何回も部隊が変わる都度行わなければならない申告の儀式に、これが最初の申告であり緊張は体が震えるほどの(ちょっと大袈裟)ものでした。この時の院長はもうお亡くなりになっていられるので実名で書かせて戴きますが、後に昭和天皇の侍医長で在られた高木 顕先生でした。そこには院長を始め陸将の副院長、第一内科部長、総務課長などの制服を着た人々が立ち並んでいました。遂に小生の番が来ました。『井口和幸は昭和53年4月14日付けで一等空曹幹部候補生に任ぜられ自衛隊中央病院付きを命ぜられました』これです。これだけを言うのですが、その後はしくじった事もありましたがこの時は多分旨く言えた様に思います。そしてこれからがわが自衛隊人生の始まりです。5月になると幹部候補生学校への入校が控え、国家試験の合格と伴に2等空尉に任官します。そこで知ったのですが、入隊して他の先生達に聞いた所小生の様に中央病院や六本木の防衛庁幕僚監部以外の基地に行き幹部候補生の試験を誰も受けていないと、大体面接ぐらいで筆記試験など有る訳がないと。あの入間基地での試験はなんだったのか? あの屈辱的な身体検査は?だから面接官がにやにやしていたんだ。更に追い討ちをかけるように先輩たちが『馬鹿だなお前、なんで航空なんかに入ったの?自衛隊で医者やるなら陸上だよ。中央病院に居られるし、地区病院も多いし』小生何も知らずに。しかし小生の選択は今となってみるとそんなに間違ってはいませんでした。14年間の医官生活で航空自衛隊の基地、仲間、同僚が楽しく微笑ましく、時に憂鬱にしてくれました。次回に続く。

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